朝鮮戦争での聖ミカエルの奇跡2

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朝鮮戦争での聖ミカエルの奇跡2

「親愛なる母さん

誰も信じないと思うので、母さん以外の人間には誰にもこの手紙を書きませんでした。母さんでさえが簡単には信じられないかもしれませんが、しかし誰かに話さなければなりません。実は僕は入院しています。心配しないで、こうして手紙を書いるので心配ご無用です。大丈夫。医者は一カ月もすれば治ると言っています。

でもそれが言いたいわけではありません。

去年、僕が海兵隊に入る時のことを覚えていますか―僕が家を出るときのことを。母さんがしつこく、毎日聖ミカエルに祈るよう僕に言ったことを。でも本当は母さんは僕にそう言う必要はなかった。物心ついたときから母さんは僕に大天使聖ミカエルに祈るよう言っていたから。母さんは僕に聖ミカエルにちなんで名前をつけたくらいだからね。僕はいつも祈ってきました。

朝鮮に行ってからは、もっと懸命に祈りました。母さんが僕に教えてくれた祈りを覚えているでしょうー「ミカエル、朝のミカエル、天国の生きた飾り…」その後は知っているよね。そうです、僕はその祈りを毎日唱えていました。行進中の時、あるいは休憩中に祈ることもありました。仲間の何人かにはその祈りを唱えるよう勧めさえしました。

ある日のこと、僕は特殊任務を帯びて前線に向かっていました。僕たちは共産軍を偵察していたのです。厳寒の中を重い足取りで進み、吐く息はタバコの煙のようでした。

僕は偵察をしている連中はみな知っているとばかり思っていたけれど、今まであったこともない一人の海兵隊員が僕の脇にやって来ました。彼は、僕が会ったどの海兵隊員よりも背が高かった。おそらく6フィート4インチ(約193センチ)はあり、体は均整がとれていた。そのような体格の人間がそばにいるということは安心感が持てました。

とにかく僕たちは一緒に偵察を続けました。他の偵察隊は散ってゆきました。僕は会話を切り出すために言いました―「冷えるね」僕は笑ってしまいました。ここではいつ殺されてもおかしくない状況なのに、僕は気温の話をしているのですから。

連れは僕の言うことを理解したようでした。ふっという笑い声が聞こえました。僕は彼を見つめて言いましたー「初めて見る顔だね。僕は部隊の連中はみんな知っていると思っていたけど」

「ぎりぎりで参加したんだ」と彼は応えました。「ミカエルだ」

「へーぇ、マジかよ」僕は驚いて言いました。「僕も同じ名前だ」

「知っているよ」彼は言い、そして続けました。「ミカエル、朝のミカエル・・・」

僕はびっくりして、一瞬何も言えなかった。なぜ彼は僕の名前を知っているのか、そして母さんが僕に教えてくれた祈りも。次に僕は自分を納得させた、部隊のだれもが僕のことを知っている。僕は聞いてくれる者には誰にでもその祈りを教えたではないか。仲間は僕のことを聖ミカエルに関連付けて話したからだと。しばらく僕たちは何も話さず、そして彼が沈黙を破りました。

「この先で僕たちはトラブルに巻き込まれる」

彼はよっぽど体の調子がよかったか、あるいは息が浅かったに違いありませんでした。彼の吐く息が見えません。僕の吐く息は真っ白でした。彼の顔にもはや笑みはありませんでした。トラブルがあると言っても、僕は内心思いました、僕たちは共産軍に囲まれているわけだから、いまさら・・・。雪が勢いよく降り始めました。田園風景はあっという間に雪に覆われました。僕はしばらく先の見えない雪の降りしきる中を進んでゆきました。僕の連れは見えなくなってしまいました。

「ミカエル!」僕は叫びました。

彼が僕の腕をつかむのを感じ、彼の朗々とした力強い声が聞こえました。「この雪はすぐに止む」

彼の言葉が正しいことが証明されました。雪は、降り始めたときと同じように数分で突然やみました。輝く円盤である太陽が現れました。別の偵察隊を振り返って探しましたが、何も目に入りませんでした。大雪のために後続部隊は僕たちを見失ったのでした。前方はなだらかな上り坂になっていました。

母さん、心臓が止まりました。7人いました。綿入りズボンとジャケット、そして滑稽な形の帽子をかぶった7人の共産軍が。今や、滑稽などというどころではありません。7つのライフル銃が僕たちに向けられていたのです。

「伏せろ、ミカエル!」僕は叫んで、凍った大地に身を投げ出しました。

7つのライフルの撃たれる音が、ほとんど同時に聞こえました。ミカエルはまだ立っていました。母さん、その射程距離で彼らが打ち損じたということはあり得ません。文字通り彼は蜂の巣になったと思いました。しかし彼は、撃ち返そうともせずに立ったままだったのです。彼は恐怖で立ちすくんでいたのです。それは、母さん、最も勇敢な者にも時おり起こることです。彼は蛇ににらまれたカエルのようでした。少なくとも僕はその時そう思いました。僕は飛び起きて彼をつかんで伏せさせようとしました。その時です、僕は突然胸に熱い炎を感じたのです。僕はよく、撃たれるということはどんな感じだろうかと考えましたが、今は分かります。

僕は力強い腕―この上もなくやわらかな雪の枕に僕を寝かせる腕に抱えられた感触を覚えています。僕は最後の一瞥(いちべつ)のために眼を開けました。僕は死ぬのでした。すでに死んでいたのかもしれません、思考は良好で、死ぬのも悪くはないなと思いました。僕は太陽を見ていたのかもしれません。僕はショックを受けていたのかもしれません。しかし、僕は再びミカエルが立っているのを見ていた、でも今回は彼の顔はすさまじい壮麗な光で輝いていました。言った通り、それは太陽であったかもしれません、しかし、僕が彼を見ている間に彼は変わってゆく様に見えたのです。背丈は大きくなり、彼は大きく腕を広げ、たぶん再び雪が降り始めたのかもしれません、彼の周りを、まるで天使の翼の様に光が包んでいたのです。彼の手には一本の剣が握られていました。まばゆい光を発した剣です。これが僕が覚えている最後のことで、その後仲間が来て僕を発見したのです。僕にはどのくらい時間が経っていたのか分かりませんでした。時おり痛みと熱から眠りに陥りました。仲間に前方に敵がいることを知らせたのを覚えています。

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